問題10 次の(1)から(5)の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
(1)
マスコミで毎日のように環境問題が取り上げられているが、本当に「環境問題」と言っていいのだろうか。
地球温暖化にしろ、森林破(は)壊(かい)(注)にしろ、エネルギー資源の不足にしろ、これらはどれも人類によって起こされた問題である。しかし、このような問題を環境問題と呼ぶことで、人は無意識のうちにその問題から目をそらしているのではないか。むしろ「人間問題」と呼ぶことで自分の問題としてとらえることになり、未来の環境を変えることができるのではないだろうか。
(注)森林破(は)壊(かい):森林が壊(こわ)されて少なくなったりなくなったりすること
55 筆者は、なぜ環境問題を「人間問題」と呼んだほうがよいと考えているか。
1 環境は人間にしか変えられないから
2 良い環境を必要としているのは人間だから
3 人間が責任を持って考えるべき問題だから
4 人間の生活に多大な影(えい)響(きょう)を与えている問題だから
(2)
以下は、ある会社が出したメールの内容である。
お客様各(かく)位(い)
いつも「ジミック」のプリンターをご愛用いただき、ありがとうございます。
さて、弊(へい)社(しゃ)では、お客様がプリンター用インクを追加購(こう)入(にゅう)(注)なさる際に、定価の5%引きでお求めいただいておりますが、この7、8月中に購(こう)入(にゅう)のお申し込みをされたお客様には、さらにお得な特別割引価格でお届けいたします。この機会にご利用いただければ幸いです。詳しくはホームページをご覧ください。
今後とも「ジミック」の製品をご愛用くださいますようお願い申し上げます。
(注)購(こう)入(にゅう)する:買う
56 この会社の割引サービスについて正しいものはどれか。
1 「ジミック」のプリンターを使っている人は、7、8月中だけインクを5%引きで買うことができる。
2 「ジミック」のプリンターを使っている人が7、8月中にインクを注文すれば、5%引きより安く買うことができる。
3 「ジミック」のプリンターを7、8月中に買う人は、インクを5%引きより安く買うことができる。
4 「ジミック」のプリンターを7、8月中に買う人がインクを一(いっ)緒(しょ)に注文すれば、どちらも5%引きで買うことができる。
(3)
恐れてはいけないとか、不安を持ってはいけないとか言われることがあるかもしれない。しかし、恐怖や不安は、車にたとえればブレーキである。車の安全にとって重要なのはアクセルではなく、ブレーキなのだ。アクセルをふかして(注1)スピードを出すことより、危険を察(さっ)知(ち)して(注2)ブレーキをかけて止まったり、スピードを落としたりすることで事故は防げる。その意味で、ブレーキのない車を走らせることはできないのだ。われわれ人間も恐怖や不安という名のブレーキを使って、自分たちの安全に役立てることが大切だ。
(広瀬弘忠『人はなぜ危険に近づくのか』による)
(注1)アクセルをふかす:アクセルを強く踏(ふ)んでエンジンを速く回転させる
(注2)~を察(さっ)知(ち)する:~に気がつく
57 筆者は、恐怖や不安をどうとらえているか。
1 恐怖や不安は、安全性の向上を妨(さまた)げる。
2 恐怖や不安を感じることが、安全につながる。
3 恐怖や不安を取り除くことが、安全に役立つ。
4 恐怖や不安があるうちは、安全とは言えない。
(4)
人に強い影響(えいきょう)を与えるのは大部(たいぶ)(注1)からなる作品とは限りません。何(なに)気(げ)なく(注2)読んだ、たった一言に心打たれることもあります。そして、書物を越えて、私たちは世の中のあらゆるできごとについても同じように、そのときどきに応じた深度で読んでいるのです。つまり、読みとろうと思えばどんなできごとからでも「自分にとって意味あること」を読みとれるということではないでしょうか。学ぼうとする姿勢があれば何からでも価値あることが学びとれるのだとつくづく私は思うのです。
(村田夏子『読書の心理学—読書で開く心の世界への扉』による)
(注1)大(たい)部(ぶ):書物の冊数やページ数が多いこと
(注2)何(なに)気(げ)なく:はっきりとした目的や理由を持たないで
58 人に強い影響(えいきょう)を与えるのは大部(たいぶ)からなる作品とは限りませんとあるが、なぜか。
1 強い影(えい)響(きょう)を与えるかどうかは、読み手の姿勢で決まるものであるから
2 どのような作品でも、読めば読むほど強い影(えい)響(きょう)を受けるものであるから
3 人々にどのような影(えい)響(きょう)を与えるかは、書物によってそれぞれ異なるから
4 書物だけでなく、世の中のできごとからもさまざまな影(えい)響(きょう)を受けているから
(5)
ぼくはいつも思うのだが、視(し)覚(かく)にとらえたものをただ単に描(か)いても、決して絵画にはならない。視(し)覚(かく)のかなた(注1)にかくされているものをとらえて、それを画面に定着させたとき、はじめて絵画が誕生する。絵画とは目の前の自然を心のなかに消化し、それをもう一度吐(は)きだす作業によって生まれるのだ。そうすることによってはじめて普(ふ)遍(へん)的(てき)な(注2)美(び)の世界が出(しゅつ)現(げん)するのだと思う。だから芸術というものは、理(り)屈(くつ)(注3)では解決できないものなのだ。理(り)屈(くつ)を超(こ)えたところに本当の美(び)がある。
(石本正『絵をかくよろこび』による)
(注1)かなた:向こう
(注2)普(ふ)遍(へん)的(てき)な:広くすべてのものに共通して見られる
(注3)理(り)屈(くつ):論理的な説明
59 筆者が考える絵画とはどのようなものか。
1 目で見たものを想像力で補い美しく描(か)き表したもの
2 目で見たものを心のなかに感じ取って描(か)き表したもの
3 目の前に存在しないものを想像しながら描(か)き表したもの
4 目の前にあるものをできるだけ現実に近づけて描(か)き表したもの
|